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上野通明さん
(チェロ)

6人の若獅子が集う 奇跡のチェロ・アンサンブル

2018.12.27(木) 19:00
浜離宮朝日ホール

チェロ: 上野通明、岡本侑也、辻本玲、小林幸太郎、伊藤悠貴、伊東裕

◆プログラム
J. クレンゲル:賛歌*
J. バリエール:二台のチェロのためのソナタ
R. ワグナー:歌劇ローエングリンから
  エルザの大聖堂への行進
S. ラフマニノフ:10の前奏曲から第5曲 作品23-5*
G. フォーレ:パヴァーヌ*
A. ピアソラ:アディオスノニーノ*
   <休憩>
D. ポッパー:レクイエム
A. ピアソラ:現実との3分間*
N. リムスキー=コルサコフ:
  シェヘラザードより若き王子と若き王女*
A. ピアソラ:リベルタンゴ*
C. ドビュッシー:月の光*
D. ポッパー:ハンガリー狂詩曲 作品68*

アンコール曲:ロドリゲス/小林幸太郎編:
 ラ・クンパルシータ

*編曲:小林幸太郎

今回のコンサートのこと、そして4年目を迎えたデュッセルドルフでの留学生活について上野さんに伺いました。

Q1. 6人のチェリストの中で上野さんが一番若いとのことでしたが、ほぼ同じ年代の男性6人、チェロだけの演奏会はいかがでしたか。

A1. チェロアンサンブルは高校時代から学校の恒例行事として年に一度チャンスがあり、いつもとても楽しみにしていました。チェロは音域が広いため様々な曲をアレンジして演奏する事ができ、チェロだけでもこんなに多様な表現ができるんだと、誇りに思えます。リハの雰囲気も笑いが絶えず、僕にとって特別なコンサートです。

Q2. チェロ・アンサンブルということで、メンバーの一人である小林幸太郎さんが12曲のうち9曲を編曲されたとのこと。演奏会の後、上野さんが小林さんの編曲を「本当に素晴らしい。」とおっしゃっていましたが、どのような点が素晴らしいと感じられたのでしょうか。

A2. オリジナルがある曲を演奏する場合、その編曲がパフォーマンスの出来栄えや印象を大きく左右すると思います。小林君は桐朋のチェロアン時代から様々な曲をチェロだけの様々な編成に編曲してくれて、彼自身が楽器の事をよくわかった上で編曲してくれるので、弾きやすくもあり、響きやバランスも素晴らしくなるのだと思います。(時々かなりハードな事をさせられますが…笑)

Q3. この演奏会の冒頭、小林幸太郎さんが「普通の演奏会では、だいたい同じ人が同じパートを弾くけれども、今回はみんながいろんなパートを弾くようにしました。」とお話されていました。そのため、曲が変わる毎に席替えがあり、みなさん毎回違うパートを弾かれていました。聴き手も「次はどんな順番かしら」と毎回プログラムを見て楽しんでいました。演奏者にとってこういうプログラミングはいかがでしたか。楽しいところ、難しいところはどんなところだったでしょうか。

A3. 室内楽でもチェロアンサンブルでも、その作品によって、楽器やパートに華やかな部分や技巧的な難易度に偏りが出る事がたまにあります。小林君はそれをできるだけなくそうと試みてくれたわけで、聴いている方々にとっては少し目まぐるしい所もあったかもしれませんが、自分たちはそれぞれの作品の中で交代に聴かせ場所を持つことができ、新鮮な感覚でとても楽しかったです。

Q4. 6人のチェリストとの演奏会を経て、いろいろと気付いた点、学んだ点があったかと思いますが、如何でしょうか。

A4. 同じ楽器の奏者がステージに並んで演奏すると、音色、音量、弾き方等の違いに嫌でも気づかされます。最終的にはそんなことは関係なく、一つのまとまった音楽に聴こえていてくれたはずだと思いますが、共演の方々の素晴らしく豊かな音や音色、フレージングなど、自分とは違うアイディアや発見があり、本当に勉強になりました。

Q5. 上野さんの留学生活についてお聞きしたいと思います。デュッセルドルフ音楽大学に留学されて4年目。留学前と後でご自分はどのように変わったと思いますか。

A5. とにかく毎日夢中で過ごしているうちにあっという間に時間が過ぎてしまいます。やはりヨーロッパの作曲家たちが実際に生活をしていた場所で勉強ができる事は知らないうちに音楽を作る上で大きな影響を受けていると思いますし、語学を習得できたのもその国の文化を深く知る上でとても違うと思います。

また、財団様のお陰で大きな音楽祭や国際コンクールへの参加を次々実現できている事により、自分の中での演奏に対するイメージも大分変わりました。音楽祭や国際コンで昔からの仲間がどんどん良い演奏をすると、本当に沢山の刺激を受けます。また、いつも熱く刺激的なレッスンをしてくださる師匠のお陰で、曲に対するアプローチの仕方や、ソリストとしての在り方など、様々な事が日々発見として自分を成長させてくれていると実感しています。

Q6. 師匠のピーター・ウィスペルウェイ先生はどんな先生ですか。特に何を課題として提示されていますか。先生から学んだことはどんなことでしょうか。

A6. ちょっと変わり者のような印象のある師匠ですが、人間として自分の信念を決して曲げない、自分が良いと思ったものは他人が何と言おうと信じ続け、長い時間をかけてそれが正しかったという確信に変える…といった所のある、人間的にとても素晴らしい方だと思います。それがそのまま演奏家としての在り方や音楽そのものにも反映されているので、そんな所も含め本当に沢山の事を学ばせていただいています!

Q7. 江副記念財団器楽部門の奨学生の皆さんに同じ質問をしています。上野さんが、一番幸せだなぁと思う時はどんな時ですか。自分を一番元気づけてくれるモノ(人、食べ物等)は何ですか。

A7. 自分が一番幸せだと思うときは、素晴らしい音響の大きなホールで、自分の音が心地よく豊かにホールを鳴らしているのを感じ、作品の魅力を存分に聴いている人と共有できてると感じられる時です。

そしてもちろん寝ているときも幸せです。自分を元気づけてくれる食べ物は美味しいチョコレート(ジャン・ポール・エヴァンにはまっています)です。 

上野さんの回答を読んでいると、それ程口数が多い方ではないように思う上野さんですが、内に秘めた強い意志と信念を感じます。コンサート、コンクール、留学生活等から多くの事を学び、吸収し、それを実感している上野さん。それが演奏や演奏家としての在り方に反映されているとのこと。これから上野さんがどのように変わっていくのか、楽しみです♪

そしてなんと!2019年12月27日、同じメンバーで3回目のコンサートを開催するそうです。場所は東京文化会館小ホール。聴き逃せません♫